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ネパール出張|15年前、人間不信の僕を救ってくれた国で、日本の物流の未来を繋ぐ

  • 19 時間前
  • 読了時間: 10分

1. プロローグ:2011年9月、異国の古都の片隅で

2011年9月、私はカトマンズの世界遺産、ダルバール広場を歩きながら、ネパールという国が持つ不思議な穏やかさを肌で感じていた。


大学の夏休みを利用して、高校時代の友人と2人で1ヶ月間のバックパッカー旅でインドを訪れた。旅の途中で私たちは隣国ネパールにも立ち寄ることにした。たしか、ヒンドゥー教の聖地バラナシから国境を越える長距離バスに乗り、山道を10時間以上も揺られてやって来たように思う。


2011年に撮影したダルバール広場(旧王宮) 2015年の大地震で倒壊し、今は見られない姿


インドでは、容赦ない物売りの猛勢や巧妙な詐欺師たちに何度も痛い目に遭わされていた。すっかり「人間不信」に陥っていた私たちは、「話しかけてくる人間すべてが詐欺師に見える」ほどガチガチの警戒心と血走った目で、国境を越えたネパール側の最初の街・スノウリで一晩を過ごした。


しかし、そこで私たちの凍りついた心は、拍子抜けするほどマイルドに溶かされることになる。


隣国インドと、文字も、宗教も、文化も驚くほど似ている。それなのに、ネパールの人々にはあの執拗なまでの押し付けがましさが一切なかった。すれ違う人々や、警戒する私たちを遠巻きに眺める地元の子供たちは、すっと寄り添うような、素朴で純粋な笑顔を向けてくれたのだ。長いバス旅の疲労も、張り詰めていた糸が緩むように、心地よく解きほぐされていくようだった。


そのマイルドさに救われ、ネパールは私にとって「大好きな国」になった。


あれから15年――。 ただの旅人だった私は、外国人材紹介会社の代表として、特別な想いで再びこの地を踏みしめている。


当時は自分が人材紹介業で起業するなんて夢にも思っていなかったが、本当に不思議な巡り合わせだと感じずにはいられない。



2. 物流業界の未来を背負う、A社長との「2泊4日」弾丸視察

今回の出張は、国内で物流業を展開する顧客企業のA社長との2人旅だ。


――とはいえ、現地の移動や各施設への橋渡しは、心強いパートナーである現地提携先のN社長はじめ、現地スタッフの皆様が、付きっきりで完璧にアテンドしてくださった。


今、日本の物流・倉庫業界は、いわゆる「2024年問題」をはじめ、深刻なドライバー不足、作業スタッフの人手不足の真っ只中にある。

そんな中、業界の救世主として期待されている特定技能「物流倉庫」の受け入れが、いよいよ2027年4月から開始される予定だ。この大きな転換期を前に、私たちは現地の教育インフラを直接視察するためにネパールを訪れた。


5/20(水)の朝に成田空港を出発し、同日の午後にカトマンズへ到着。そこから現地を日本語学校3校と重機のトレーニング施設を周り、22(金)の深夜便に乗って23(土)朝には成田へ戻る「2泊4日」の強行軍だ。




3. GDPの4分の1。「出稼ぎ大国」ネパールの実情

ここで少し、ネパールという国の経済的・人口的な実情について、日本と比較しながら触れておきたい。日本ではヒマラヤ登山や「観光業」のイメージが強いネパールだが、実は世界屈指の「出稼ぎ大国」という側面を持っている。


ネパールの総人口は約2,970万人 。驚くべきはその若さで、日本の平均年齢が48歳を超え少子高齢化が深刻化する一方で、ネパールの平均年齢はわずか25.7歳と、国全体が圧倒的な労働力とエネルギーに満ち溢れている 。


しかし、ネパール国内には大きな製造業などの産業が少なく、この豊富な若い労働力が国内で十分な働き口がない構造的な課題がある。そのため、若者たちが中東やマレーシア、そして日本などの海外へ渡って働き、本国へ送金するスタイルが定着している。

その海外からの送金額(レミッタンス)は、なんと国のGDPの「約4分の1(25%〜28%)」に達している。


ネパールの経済規模(名目GDP)が約430億ドル(約4兆7,000億円)であるのに対し、海外の若者たちから毎年送られてくる仕送りの総額は、年間110億〜123億ドル(約1兆2,000億〜1兆3,500億円)にのぼる。


国を代表する産業と思われがちな観光業(GDP比約7%)や農業(約25%)の規模をも凌駕し、今や海外からの出稼ぎ送金(GDP比約26%)こそが、実質的に最大の産業でありネパールの原動力となっている。


そしてこの巨額の送金が国内消費を強力に強力に下支えしている結果、ネパールの実質GDP成長率は近年3%〜4%台という堅調な伸びを記録しており、まさに「若者たちの出稼ぎ」が国の経済成長そのものをダイレクトに牽引している。


「GDPの約4分の1」と聞いてもピンとこないかもしれないが、日本の経済構造と比較すると、これがどれほど異様な数字かがよくわかる。


内閣府の国民経済計算(GDP統計)によると、日本の基幹産業である「製造業(自動車・電機・機械など、日本のものづくりすべて)」が日本のGDPに占める割合は、約20%だ。ちなみに、日本の出稼ぎ送金額は、GDP比で約0.04%に過ぎない。


まさに国の経済が、海外へ飛び立つ若者たちの両肩にかかっていると言っても過言ではない。


若者たちにとって海外で働くことは、単なる個人のキャリアアップではなく、一族の生活と国家の未来を背負った「重大な国家的ミッション」なのだ。だからこそ、彼らが仕事に向き合うハングリー精神と責任感には、目を見張るほどの圧倒的な熱量がある。


その圧倒的な熱量を肌で感じるため、私たちは最初の目的地へと向かった。






4. 日本語学校視察:「日本でキャリアを築きたい」若者たちの熱気

最初に向かったのは、現地の日本語学校だ。ネパールの伝統的な歓迎の布(カダ)を首に巻いてもらい、A社社長と2人で生徒たちへ挨拶のスピーチをした。ひらがな表が壁に貼られた教室で、真剣に耳を傾ける生徒たちの目は、信じられないほど純粋でキラキラしていた。




2027年4月の特定技能スタート時に日本へ送り出すためには、今からの言語教育とマインドセットが不可欠だ。ネパール語と日本語は語順が同じなため、彼らの言語習得スピードは早いが、それ以上に「単なる海外出稼ぎ」ではなく、「日本の物流現場でプロとしてキャリアを築きたい」という彼らの高いモチベーションに、A社長も深く感銘を受けていた。





5. 即戦力を生む重機トレーニングセンター:確かな技術と安全思想

続いて私たちは、特定技能「物流倉庫」即戦力化の要となる、重機のトレーニングセンターへと向かった。



センターの責任者と議論を交わし、実際にフォークリフトや油圧ショベルがキビキビと動く現場をA社長と共に見守った。



驚いたのは、その教育の質の高さだ。単に運転ができるだけでなく、壁には安全教育のポスターが徹底して貼られ、安全第一の思想が叩き込まれていた。日本の厳しい安全基準を知るA社長も、彼らの丁寧なレバー操作や安全確認の動きを見て、納得の表情を浮かべてくれた。






6. 「静」のおじさんと「動」のおばさん

ネパール滞在中によく見かけたのは、道端にただじっと座って宙を見つめるおじさんたちである。そのあまりにもニュートラルな表情から、私たちは彼らのことを「虚無おじさん」と呼ぶことにした。



そこには、世界遺産である街と同化する大量の虚無おじさんたちがいた。すぐ隣にある古い木や石の柱から、そのままふっと出てきたのではないかと思うほど、違和感なく風景に溶け込んでいる。なんとも言えない風情を放つ人々であった。



さらに街を観察してみると、もう一つの面白い事実に気がついた。「何もしていないおばさん」は見当たらないのだ。


おじさんたちが世界遺産の特等席で時間を忘れている一方で、おばさんたちは実にパワフルに動いている。軒先で野菜を並べて販売していたり、広場で泥だらけになりながら穀物を干していたり、談笑していたり。ネパールの社会は、実はこのパワフルな「おばさんたちの実務(動)」によって現実的に回っており、その横に、ただ世界を肯定して座っている「おじさんたちの余白(静)」がある。



先ほど触れた「出稼ぎ大国」としての歴史を踏まえて、風景と同化した虚無おじさんたちを眺めていると、私はある「想像」に行き着く。

「今、ここで1日中何もせずに座っているおじさんたちも、かつては今の日本語学校の若者たちと同じように、世界のどこかへ出稼ぎに出て、必死に一族を支えていたのではないか」と。


若き日の彼らは、異国の過酷な現場で必死に働き、祖国の一族へ仕送りを続け、家族を養い、国を支え切った。引退した今、ようやく故郷の世界遺産の風に吹かれながら、贅沢な「余白の時間」を楽しんでいるのではないか。そう思うと、彼らの虚無の表情が、闘い終えた「老兵の誇り高き安息の姿」に見えてくる。そんな妄想に耽っていると、私は勝手に胸が熱くなった。



A社長も私も、何もしていない時間を「もったいない」と感じてしまうタイプである。しかし、全員が私たちのように「常に動き、成果を追い求める戦闘モード」の人間ばかりでは、組織はいつか摩擦で燃え尽きてしまう。


彼らの姿は、組織が不測の事態にしなやかに対応し、持続的に成長するために不可欠な「組織スラック(Organizational Slack=組織の余裕・遊び・余白)」が必要であると伝えてくれているようにも思えた。


現実をキビキビと動かすエネルギーと同じくらい、そこにあるだけで空気をマイルドにし、安心感をもたらす心のゆとり(余白)が、強い組織には必要なのかもしれない。彼らの姿を見て、自社の組織論について考えさせられた。



7. 空港を埋め尽くす見送りの列:国を背負い、家族を背負うということ

帰国のために訪れたカトマンズの空港。そこには、言葉を失うほどの光景が広がっていた。


見送りエリアを埋め尽くす、数え切れないほどの人波。海外へと出稼ぎに出発する一人の若者を見送るために、何人もの家族や親戚、友人たちが集まり、祈るような眼差しでゲートを見つめている。


そんな熱気と切実さが入り混じる人混みの中で、私の目は、ある一人の若者に釘付けになった。

彼は、ネパールの国旗を誇らしげに肩から掛けて、家族や仲間に囲まれていたのだ。そして別れを惜しんだ後、その国旗を背負ったまま、まっすぐ出国ゲートを潜っていった。文字通り、国を背負う気概に満ちあふれたその後ろ姿を見送ったとき、私は胸を強く突き刺されるような思いがした。


聞けば、彼らは一度出国すると、5年、あるいは10年もの間、故郷の土を踏むことはないという。彼らにとっては「出国の重み」が根本から違うのだと気付かされた。


空港にて海外へ出稼ぎに出る家族を見送る人々



8. エピローグ:日本の物流を共に救うパートナーとして

5/22(金)の深夜便に飛び乗り、私たちはカトマンズを後にした。


15年前、不安の中で国境を越えたあの日、スノウリやカトマンズで出会った人々の穏やかな笑顔。人間不信だった私を温かく救ってくれたあの素朴さは、時代を経て、日本の深刻な人手不足を解決する「圧倒的なモチベーションと確かな技術力」という強い武器に進化していた。


少子高齢化によって深刻な労働力不足に直面している日本。そして、若く優秀なエネルギーに満ち溢れながらも、その力を発揮する国内産業を求めているネパール。今の私たちと彼らの関係は、決して一方が他方を助けるような「恩返し」のストーリーではない。お互いの課題を補い合い、相乗効果で共に成長していく対等な「ビジネスパートナー」そのものだ。


国や家族を背負ってやってくる彼らの覚悟に、日本の経営者も本気で応え、最高のキャリアのステージを用意する。その最高の未来を、株式会社グローバークスがしっかりと繋いでいく。


最後になりますが、このあまりにも濃密な2泊4日の旅を、終始付きっきりで支えてくださった提携先のN社長、そして現地でサポートいただいたすべてのスタッフの方々、そして今回の旅を最高の熱量で共に走り抜いてくださったA社長、本当にありがとうございました。心からの深い感謝を申し上げます。



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■ この記事を書いた人

株式会社グローバークス 代表取締役 

森永 健太

株式会社グローバークスのChief Marketing Officerである趙小雨氏が船上で撮影した写真。

新卒で川崎重工業(株)に入社後、海外営業および新卒採用リクルーター業務に従事。優秀な外国人の同僚の活躍を目の当たりにする中で、日本の良い製品・サービス・文化を世界に広めるには外国人材の活躍が不可欠であると実感。「外国人財の活躍促進による日本社会の活性化」を通じて、日本企業の国際競争力の向上、労働力不足の解消に貢献したいという思いから、2020年に株式会社グローバークスを設立。 中国語・英語対応可(HSK6級、TOEIC905)

慶應義塾大学大学院修了(経営学修士) / 中小企業診断士 







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