日本で働く外国人のための老後資金づくりガイド:年金だけで足りますか?
- 小雨 趙
- 6月24日
- 読了時間: 8分
更新日:6月26日
こんにちは!グローバークス代表の森永です。私は外国人材の就職支援に携わる中で、外国人雇用労務士や中小企業診断士としての知識を活用し、在日外国人の皆さんに必要なライフプランに関するアドバイスもさせていただいています。
ところで、「老後2000万円問題」ってご存知ですか?これは、2019年に金融庁の金融審議会・市場ワーキンググループの報告書「高齢社会における資産形成・管理」で提起されたもので、「老後生活には年金だけでは足りず、約2000万円の自助努力による資産準備が必要だ」という試算が大きな話題となりました。
この問題、日本人だけでなく日本で暮らす外国人にとっても他人事ではありません。実際に、これまで就職支援してきた元留学生で現在は日本で働く外国人の方々からも「日本で老後を迎えるとしたら、どんな準備が必要ですか?」という声をいただくことが増えています。
そこで今回は、日本で働く外国人の方に向けて、老後資金の備えとして活用できる公的制度や、資産形成の基本について、わかりやすくまとめてみました。

目次
◆年金って払ってるけど、実はよくわかってない?
日本で働く外国人の多くは、会社を通じて「厚生年金」や「健康保険」に加入しています。給料から毎月保険料が引かれていて、「なんとなく払っているけど、正直どういう仕組みなのかよくわからない……」という人も多いのではないでしょうか。
特に30代・40代の働き盛りの方にとって、「老後」はまだまだ先の話に感じられるかもしれません。でも、「老後にどれくらいお金が必要なのか」「今の年金で足りるのか」といった疑問や不安がふと頭をよぎる瞬間もあるはずです。
実は、日本には老後の生活を支えるためのさまざまな制度や仕組みがあります。それらをうまく活用すれば、将来への備えを“今”から少しずつ始めることができます。
このコラムでは、まずは日本の年金制度や保険制度の基本をやさしく整理しながら、老後資金の準備に役立つつみたてNISAやiDeCoといった制度の活用方法、さらに自分に合ったプランを見つける方法まで、わかりやすく紹介していきます。
◆公的保険と民間保険の違いって?|まず知っておきたい基本の制度
まず最初に知っておきたいのが、「公的保険」と「民間保険」はそもそも目的も仕組みも違うということです。
公的保険って何?
日本で働くと、ほとんどの人が自動的に「公的保険」に加入しています。 これは国が運営している制度で、病気・けが・老後・失業など、生活に困らない最低限の保障をみんなで支え合う仕組みです。
代表的なものを簡単に説明すると以下の通りです。
健康保険(けんこうほけん):病院に行ったとき、自己負担が3割で済む制度
厚生年金(こうせいねんきん):会社員や公務員として働いていた人が、老齢年金、障害年金、遺族年金などのお金を受け取れる制度
雇用保険(こようほけん):失業したときに一定期間、給付金が受けられる制度
労災保険(ろうさいほけん):仕事中、通勤中のけがや病気に対する補償
これらは、会社員であれば自動的に加入し、毎月のお給料から保険料が天引きされます。
「なんだかんだ全部入ってるんでしょ?」と思うかもしれませんが、実はこの公的保険だけではカバーできない部分もたくさんあるんです。
民間保険って何?
一方で、「民間保険」は保険会社が提供する商品で、自分で選んで加入する仕組みです。たとえば:
入院したときの個室料金(差額ベッド代)
長期間働けなくなった場合の生活費
将来に向けての貯蓄や年金の準備
こういった「公的保険ではカバーしきれない部分」を補うのが、民間保険の役割です。
保険の種類や保障内容はプランによってさまざまで、掛け金(保険料)は年齢や体の状態によって変わります。 つまり、どれだけ加入するか、どんな内容にするかは自分で考えて決める必要があるということです。
◆ 年金だけでは足りない?|老後の生活費とのギャップ
日本の公的年金制度は、長く働いて保険料を納めてきた人に対して、老後に一定の年金を支給する仕組みです。たとえば厚生年金に30年以上加入した場合、月に10万〜15万円ほど受け取れるケースが多いと言われています(個人差あり)。
一方で、実際の老後の生活にはどれくらいお金がかかるのでしょうか?
総務省の調査などによると、高齢夫婦二人世帯の平均支出は月22万〜25万円前後とされています。つまり、年金だけでは毎月数万円の赤字になる可能性もあるのです。
さらに、年をとるにつれて医療費や介護費が増えることも考えられます。たとえば:
入院時の差額ベッド代(個室料金など)
介護サービスの自己負担分
住宅のバリアフリー改修など
これらの費用は、公的保険だけではカバーしきれないことも少なくありません。
だからこそ、「老後は年金があるから大丈夫」ではなく、自分で備える力=資産形成がとても重要になってくるのです。
◆つみたてNISAとiDeCoって何?|はじめてでもわかる資産形成の基本
「資産運用」や「投資」と聞くと、「自分には関係なさそう」と感じる人もいるかもしれません。特に日本で働く外国人にとっては、NISAやiDeCoという制度の名前すら初めて聞いた、というケースも多いでしょう。
でも実はこの2つ、将来のために“税金を抑えながらお金を増やせる”国の制度なんです。 しかも、少額から始められて、難しい知識がなくても運用できるよう工夫されています。
ここではまず、それぞれの制度のざっくりとした特徴と違いを見てみましょう。

iDeCo(個人型確定拠出年金)って?
目的: 老後の生活資金を自分で積み立てる私的年金制度
税制メリット: 毎月の掛金が全額所得控除になり、所得税・住民税が安くなる
運用益も非課税(=増えた分にも税金がかからない)
引き出し制限あり: 原則60歳までは引き出せない
月額上限は職業や加入年金制度により異なる(例:会社員は月23,000円が上限)
✔️ 向いている人: 老後のためにコツコツ積み立てたい人、節税も意識したい人

つみたてNISAって?
目的: 投資による長期的な資産形成を支援する制度
税制メリット:毎年120万円までの投資に対して、運用益が無期限で非課税。
※新NISAでは「つみたて投資枠」として年間120万円まで、他の「成長投資枠」と合わせて最大360万円まで非課税の対象になります。
いつでも引き出し可能(途中でやめるのも自由)
投資対象: 金融庁が選んだ“長期・分散・積立”に適した投資信託やETF
✔️ 向いている人: 老後資金に限らず、将来に備えてコツコツ資産を増やしたい人
◆自分に合った備え方を考えよう|組み合わせ方とプロの力の使い方
ここまでで、iDeCoとつみたてNISAがどんな制度で、どんな違いがあるかを見てきました。 でも実際に自分で選ぶとなると、やっぱり「どっちを使えばいい?」「今の収入でどう備えればいいの?」と迷ってしまいますよね。
実は、iDeCoとつみたてNISAは併用することも可能。 たとえば、老後のためにiDeCoでコツコツ年金を積み立てつつ、途中のライフイベントにも備えてNISAで資産運用する、という使い方もあります。
ただし、それぞれの制度には「毎月の拠出上限」や「引き出しの自由度」「税制の扱い」など細かいルールがあり、職業やライフスタイルによって向き・不向きが異なるのも事実です。
「制度の違いはなんとなくわかったけど、じゃあ自分はどうしたらいい?」というときに頼りになるのが、ファイナンシャルプランナー(FP)などの専門家です。
ちなみに、私も、実は数年前に結婚したばかりのタイミングでFP相談を受けたことがあります。
当時は、将来のライフプランなんてまだ漠然としていて、何から考えればいいのか正直まったくわかりませんでした。 でも相談の中で、収入・支出・貯蓄のバランスや、老後に向けた資産形成の進め方などを「見える化」してもらい、少しずつ道筋が見えてきたのを覚えています。
専門家と話すことで、自分だけでは気づかなかった選択肢や、思い込みから解放される瞬間ってあるんですよね。 だからこそ、「迷ったら聞いてみる」のは、けっして恥ずかしいことじゃなく、むしろ前向きな第一歩だと今でも思っています。
無料で何度でも相談できるマネードットコムのようなサービスは、そのきっかけとしてもおすすめです。 ※今ならFPとの面談でAmazonギフトカード🎁がもらえる特典付きです。
◆おわりに|老後は“まだ先”ではなく、“今の延長線上”にある
「まだ老後なんて先の話」と思っていても、日本での生活が長くなればなるほど、年金や資産づくりは避けて通れないテーマになっていきます。
制度の仕組みは少し複雑に見えるかもしれませんが、一度整理しておくと、将来に対する不安がぐっと軽くなります。 完璧に理解してから始める必要はありません。「ちょっと気になったから調べてみた」でも、十分に立派な一歩です。
少しずつ、自分にできるところから。 それが将来の自分への、何よりのプレゼントになるかもしれません。

■ この記事を書いた人
株式会社グローバークス 代表取締役
森永 健太

新卒で川崎重工業(株)に入社後、海外営業および新卒採用リクルーター業務に従事。優秀な外国人の同僚の活躍を目の当たりにする中で、日本の良い製品・サービス・文化を世界に広めるには外国人材の活躍が不可欠であると実感。「外国人財の活躍促進による日本社会の活性化」を通じて、日本企業の国際競争力の向上、労働力不足の解消に貢献したいという思いから、株式会社グローバークスを設立。 中国語および英語対応可(HSK6級、TOEIC905)
慶應義塾大学大学院修了(経営学修士) / 中小企業診断士